逆流性食道炎(GERD)
逆流性食道炎とは
逆流性食道炎は胃液や胃で消化される途中の食物が、胃から食道に逆流した結果、食道が炎症を起こし、胸やけや胸痛などさまざまな症状が生じる病気です。
もともと日本人に少なかったのですが、食の欧米化に伴い患者数が増えてきています。
しかし、逆流性食道炎の原因は食事だけでなく、加齢や肥満、姿勢などによっても起こります。
逆流性食道炎の症状
- 胸やけ
- 「すっぱいものがこみ上げる」ことがよくある
- ものを飲み込むとき、つかえる感じがある
- 食べすぎたときや油っこい食事をしたときに不快感を感じる
- 食後にお腹がはったり、胃がムカムカすることがある
- 最近、胃の調子が悪く食欲がない
- 何週間も、のどのイガイガ感があったり、咳が続いている
- 睡眠中に急に咳が出て目覚めてしまうことがよくある
- 声がかすれるようになる
- 耳のあたりが痛む
「胸元がヒリヒリする」、「みぞおちの不快感」などの胸焼け症状や、「口の中がすっぱい。苦い」などの呑酸症状が続く場合、胃の内容物が食道や口腔内に逆流することで起こっている可能性があります。
また、胸焼けや呑酸症状以外にも上記のような症状が出現する場合があり、再発しやすく、治療が難しいこともあります。
このような場合、生活習慣の見直しや食事の管理、内服管理により改善を目指します。
お困りの方は当院へご相談下さい。
逆流性食道炎の原因
胃と食道の間にある下部食道括約筋の機能低下や胃酸が増えすぎることでおこってきます。
油っぽいものの摂取が多い方、過食の方、ストレスの多い方、太っている方、高齢で腰の曲がっている方に多い病気と言われています。
また、飲酒やタバコも原因の一つです。
内視鏡検査について
逆流性食道炎のガイドラインでは
- まず胃カメラを施行
- まず治療を行い、症状が持続するまたは再燃するようであれば胃カメラを施行
と記載されています。
ただ、胃潰瘍や胃がん、食道がん、好酸球性食道炎など他の病気でも同様の症状を起こすことがあります。
投薬で症状が一時的に改善すると診断が遅くなりますので、まずは胃カメラを施行することを推奨いたします。
胸やけや呑酸などの逆流症状があるにも関わらず、胃カメラの検査で食道に粘膜傷害を認めない非びらん性胃食道逆流症ともいわれます。
胃食道逆流症の60-70%を占めるといわれています。
こういった場合、通常の逆流性食道炎に比べ症状のコントロールが難しいケースや内服薬がなくならないケースがあります。
また治療中も症状が変化することあり治療に難渋することもあります。
逆流性食道炎の治療
主な治療法は、生活習慣の見直しと内服治療が中心となります。
また、何度も再発を繰り返す場合は、手術で治す方法を考慮することもあります。
生活習慣の見直し
生活習慣の見直しについてのポイントは食事や嗜好品の管理、姿勢の管理、お腹への圧迫を避けるの3つが挙げられます。
食事や嗜好品の管理
- 食事の際はゆっくり時間をかけ、一度に食べ過ぎないようにしましょう。
- タバコやアルコール・脂っこい食事・炭酸飲料水・コーヒー・柑橘類・刺激物・チョコレートなどは控えるとよいでしょう。
- 食事をとったあとはすぐに横にならないようにしましょう。
姿勢の管理
- 前かがみやおなかを圧迫する姿勢は避けましょう。
- 就寝時は左側を下にしたり、上半身をあげると良いです。
お腹への圧迫を避ける
- ベルトやコルセット、帯などをきつく締めないようにしましょう。
- 太り気味の方は、体重を減らしましょう。
お薬による治療
逆流性食道炎の内服には、胃酸の分泌を抑える薬としてPPI(プロトンポンプ阻害薬)、またはヒスタミンH2受容体拮抗薬の使用が中心となります。
その他にも、症状に応じて、消化管の運動機能を改善する薬や、粘膜を保護する薬・漢方薬や、胃酸を中和する薬を追加する場合があります。
食道がん
食道がんとは
食道はのどと胃の間をつなぐ管状の臓器です。
日本人の場合、特に食道の中央付近にできることが多いです。
進行するにつれて気管や大動脈などの周辺臓器に広がったり、リンパ管や血液によって肺や肝臓などに転移することも多いと言われています。
ご承知のとおり、がんは早期発見・早期治療が重要なのですが、その中でも食道がんは転移リスクが高いので、早期発見がとても大事なのです。
食道がんの症状
食道がんになっても、初期の段階では自覚症状があまり見られません。
しかし、徐々に飲食時の違和感、咳、声のかすれ、胸の不快感、背中の痛み、体重減少などが見られるようになります。
胸の違和感(食べたときにチクチクと痛んだり、熱いものを飲み込んだときのしみるような感じ)は、早期発見のために注意しておきたい症状です。
一時的に消えたりがんが進めば症状が消失することもあります。
早期発見のためには、症状を自覚した時に内視鏡検査を受けることをお勧めします。
食道がんの原因
お酒を飲んで顔がすぐ赤くなる(Flusherといいます)中高年男性が、強いお酒を飲んで、さらにタバコを吸うと食道がんのリスクはかなり高くなります。
このような方は定期的に内視鏡検査を受けてください。
それ以外にも野菜・果物の摂取不足や食道がんの家族歴などもリスクファクターになります。
食道がんの検査・診断
内視鏡検査で組織を取り診断します。
内視鏡検査では胃のバリウム検査で見つけにくい初期の食道がんを発見することもできます。
次に、治療方針を決めるために、進行度を診断する検査を行います。
これにはCT検査、MRI検査、PET検査、超音波検査、超音波内視鏡検査などを行います。
食道がんの治療
ごく初期の食道がんであれば、内視鏡で切除を行い根治が可能です。
進行がんになると、手術や放射線治療、抗がん剤治療などの集学的治療が必要になります。
進行がんになると治療による体への負担や再発のリスクは、胃がんや大腸癌にくらべて大きくなります。
食道中部の進行癌です。
画面下側の茶色の部分が早期癌です。
BLIという狭帯域光観察を使用し食道癌を見つけやすいモードで観察しました。
内視鏡手術で治療頂きました。
好酸球性食道炎
好酸球性食道炎とは
好酸球性食道炎は、文字通り好酸球が原因となって引き起こされる食道の炎症性疾患です。
胸やけや喉の詰まりなどの不快症状が慢性的に続くため、日常生活にも支障を来たすようになります。
以前はあまり注目されていませんでしたが、人間ドックなどで食道の状態を調べると、この病気が見つかることもあります。
好酸球性食道炎の症状
この病気に特有という訳ではありませんが、食べ物を飲み込みにくい、つまり感を認めるなどの症状を認めます。
また逆流性食道炎として投薬されても改善しない胸やけなどの症状を認めることがあります。
好酸球性食道炎の原因
詳しい原因が明らかになっていませんが、特定の食物に対する慢性的なアレルギー反応によって炎症が起こるとされています。
好酸球性食道炎の検査・診断
内視鏡検査(胃カメラ)を行います。
好酸球食道炎に特徴的な所見(縦走溝や白斑、狭窄など)があれば、組織をとり病理検査を行い診断します。
好酸球性食道炎の治療
まず胃酸の分泌を抑える薬を使用します。
食道のバリア機能も改善されるため、結果的に食道の炎症も治まっていきます。
これで改善しない場合は、喘息薬を嚥下していただきステロイド薬を食道に付着させる局所ステロイド療法を行うこともあります。
多くの場合、これらの治療を進めれば症状も改善します。
食道下部に白濁、縦走溝を認めます。